「日本語練習帳」(大野晋)

「日本語に対する哲学」ともいうべき思想

「日本語練習帳」(大野晋)岩波新書

古書店の格安コーナーで
手に取った一冊です。
読んでびっくり。
目から鱗です。
普段なにげなく使っている日本語の、
微妙な使い方の違いを
懇切丁寧に解説しています。
まるで大人のための「文法教室」、
日本語の学び直しができます。

「思う」と「考える」の違い、
「大丈夫」と「しっかり」の違い、
「意味」と「意義」の違い、…、
問題が提示され、
その後に詳しい用例と解説が
述べられています。
今まで気付かなかったことだらけでした。

中学校の国語で学習する
日本語の文法は、
難しくて取っつきにくい
ものだったという記憶があります。
「文法なんて知らなくても
日本語は話せるのに…」と思いながらも、
我慢しいしい勉強していた方が
ほとんどではないでしょうか。

教科書の文法は、
想像するに、
外国人が日本語を学ぶ上で必要となる
「日本語の構造を習得するための理論」
なのではないでしょうか。
その点、本書は
実戦的な文法の教科書なのです。
小難しい理論をさておき、
「日本語を話せる日本人が、
さらに日本語を的確に
使いこなすための技能書」
となっています。

加えて、
筆者の「日本語に対する哲学」
ともいうべき思想が
いたるところに散りばめられていて、
読むと思わず背筋を
ピンと伸ばしてしまいます。

「必要なことはまず
 区別できる単語の数を増やすこと。
 自分が区別して使える語彙が
 多くなくては、
 ぴったりとした表現ができない。」

確かに語彙が少ないと、
自分の意見を正確に表現することが
難しくなります。

「一年に一度、一生に一度しか
 出あわないような単語が、
 ここというときに
 適切に使えるかどうか。
 使えて初めて、
 よい言語生活が営めるのです。
 語彙を7万も10万ももっていたって
 使用度数1、あるいは
 一生で一度も使わないかも知れない。
 だからいらないのではなくて、
 その一回のための単語を
 蓄えていること」

そうでありたいと、
私自身いつも願っています。

この本にもっと早く出会いたかった、
読み終えてそう思いました。
出版年を確かめてみると、1999年。
さらに調べてみると、
本書は当時かなり売れた
ベストセラー新書でした。
自分が知らなかっただけだったのか!

昨今の若者言葉は
ほぼ100%美しくない日本語に
なりつつあります。
この本を読んで、
日本語に対する考えを
深めてほしいと思うのです。
中学生高校生に、
ぜひお薦めの一冊です。

※108円でこのような本が
 買える時代になったことを
 素直に喜びたいと思います。
 それにしても、
 地方のブックオフですら
 これだけの品揃え。
 都会でブックオフ巡りをしたら
 いったいどれだけの本が
 買えるのだろう。
 都会に住んでいる人が羨ましい…。

(2019.3.19)

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